気分はちょっとビールクズ

日々のクラフトビールの記録を中心に。

ビールペアリングの思考をトレースする

こんにちは。ら+です。

この記事はmstdn.beer Advent Calendar 2020の12日目です。

 

今回は2月に都内某所で行いましたビール会の際にビールとフードをペアリングさせたときに考えたことを備忘録も兼ねて書いていこうと思います.

 

会を開催した経緯

まずビール会を開催した経緯ですが,Twitterの酒好きとクラフトビールを飲んでいたら,ビール会なんか面白いんじゃないかなという話になり,そのときに私がビールとフードのペアリングを前から考えていて面白いんじゃないかと発言したところ,そのまま開催することとなりました.その後,フードは予算と人数に応じて作れる人にお願いし快諾してもらえたので都内某所で10名の参加者で行う運びとなりました.

ビール会のテーマ

テーマがないと漠然としていてフードを決められなかったので話し合ったところ,樽熟成ビール.いきなり難易度が高かった……

樽熟成である程度の数量購入可能なビールはあまりないので,ビールを決定してからフードの組み合わせを考えることとしました.

 

ビールの選定

 コース料理をイメージして,前菜、メイン、食事、デセールの4種にそれぞれ1液種を合わせることを想定して下記の4種のビールに決定しました.

  • Tired Hands Flower Feeder Saison

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    セゾンにハーブティーにも使われるハニーサックルを加えオーク樽発酵、熟成 .ワイルドフラワーハニーを加えてボトルコンディション.

  • Cascade barrelhouse brewering Sung Royal 2013

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    オーク樽熟成したレッドエールと,ウィラメットバレー産のピノノワールを浸責させてフードル(ワイン熟成用の大樽)で22ヶ月熟成させたレッドエールのブレンドさせたレッドエール.

  • breakside bellwhether

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    sour wit とジン樽熟成のdobule witのブレンド。カフィアライム(こぶみかん)を加えて爽やかかつハーバルなフレーバーを加えたサワーエール.

  • breakside Foruth waves

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    ウィーンコーヒーをブレンドし,バーボン樽(ヘブンヒル)で10ヶ月熟成させたヴィエナラガー.

ペアリングの考え方

藤原[1]と千葉・宇都宮[2]が以下に示すようなフードペアリング法を提案しており,それに則ってフードを考えました.千葉・宇都宮の方法は日本酒ペアリングの提案ですが,内容が詳細でかつ科学的な見地からも考察されていたので,ビールペアリングにも適用できると考えて参考にしました.

  • 藤原の提案(a法)
    1.誕生地/発祥地
    2.焦げ/色
    3.つり合い/組み合わせ

  • 千葉・宇都宮の提案(b法)
    1.似たもの通し
    2.対照的なもの通し
    3.味の濃淡に合わせる
    4.味を重ねる
    5.余白を埋める
    6.陰影をつける
    7.記憶にある香味の再構築
    8.新たな香味を生み出す
    9.余韻を長くする

ペアリング

以上の2法を踏まえて,前菜からデセールまでの4品のペアリングを考えました.

 

  • 前菜
    ハニーマスタードでマリネしたパプリカ,マッシュルームのソテー × Tired Hands Flower Feeder Saison

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    パプリカのマリネは,Flower Feeder Saisonには蜂蜜が使われていたので蜂蜜を使い,ビールと料理をつなぐことを意識しました.また,ビール自身に柔らかい酸味があったのでマスタードで酸味をつけて同系統の味で合わせました.b法-1に近い考え方です.
    マッシュルームのソテーは,ニンニクの香りをビールでカットして口内をサッパリさせる,マッシュルームの旨味の余韻を残すのを狙いました.

  • メイン
    ラムチョップのソテー ベリーソース × Cascade barrelhouse brewering Sung Royal 2013

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    ビールが赤ワインのような力強いサワーなので,ガツンとしたラムチョップのソテーと合わせました.a法-2,b法-3の考え方です.また,ビールにぶどうを加えてあったので,風味の近いベリー系のソースで調和させて余韻を長くするのを狙いました.b法-9の考え方でソースを選びました.

  • 食事
    バインミー(紅白なます、照り焼きチキン、コリアンダー) × breakside bellwhether

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    パンの小麦の香りとwitの小麦感を合わせるのと,ビールにコリアンダーが使われているのでフレッシュなコリアンダーを加えて同系統の香りで合わせるのを狙っています.a法-3,b法-2の考え方です.メインの具は,なますと照り焼きチキンが合わさったときの甘酸っぱさにビールの酸味を合わせるのを狙って選びました.さらに最後の油っぽさを酸味でカットするのも狙っています.そして,ここが一番こだわったポイントなんですが,あえてライムを加えずに余白を作りビールに加えたカフィライムの風味を合わせることで,バインミーとビールを口内でペアリングさせたときに完成させることを目論みました.b法-5の考え方です.

  • デセール
    カカオニブとマロンのバターケーキ マロンクリーム添え × breakside Foruth waves

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    チョコレートとコーヒーの組み合わせを考えて合わせました.コーヒーを飲みながらケーキを食べる感覚でのペアリングで, a法-2,b法-2の考え方です.黒ビールにチョコレートやクリームを合わせるのは,よく見かけるペアリングです.

ペアリングの感想

  • 前菜
    ハニーマスタードとビールの酸味の組み合わせ,マッシュルームのソテーのにんにくの香りをカットするのはよかったのですが,蜂蜜の香りをつなぐのはビール自体に蜂蜜の香りが少なくうまくいきませんでした.地味でインパクトに欠けるペアリングだったかなと思いました.

  • メイン
    これは目論み通りのペアリングだったように思います.ラム肉の旨味や香りにビールがガッチリ噛み合っていたように思います.ソースとビールの相性も良かったです.

  • 食事
    これは大成功でした!バインミー自体も美味しかったのですが,特にカフィライムのライムのようなフレーバーを加えて口内でバインミーを完成させるのがうまくハマり嬉しかったです.参加者の方も大絶賛でした!

  • デセール
    こちらもうまくハマっていました.自分としてはよくやるセオリー通りのペアリングだったのでハマるだろうなとは考えていました.意外だったのが,参加者の方が大絶賛しているのことでした.確かにビールとデセールはあまりやる組み合わせでは無いよなと思いました.

 

おわりに

ここまでペアリングの思考過程などを書いてきましたが,ハマったものが多くて安堵した記憶があります.特に食事とデセールのペアリングは皆さんに絶賛していただいて嬉しかったのを覚えております.最近はビールから遠ざかってますが,この記事を書いていてまたビール欲が出てきました.もしかしたらまた会をまたやるかもしれません.その時はよろしくおねがいします!

参考文献

1.藤原ヒロユキ(2015)『BEER HAND BOOK』 ワイン王国.

2.千葉麻里絵・宇都宮仁『最先端の日本酒ペアリング』 旭屋出版